lady first.jpg


週末、よく利用される大手企業からハイヤーの配車要請がありました。
指示書によると、ホテル先着で、都内のコンサートホールまで片送りの仕事。
乗車されるのはその企業の社長と他1名となっていました。

はて、もう一人は誰であろう・・・

週末でありましたし、ネットでそのコンサートを調べてみたら
スポンサーに取引先の企業らしき名前がありました。
どうやらお客様は会社を代表して観賞されるようでした。

ならば、部下を同伴することはないであろう。

社を代表して行くわけですから
きっと夫人に違いない・・そんな勝手な予測をあれこれとしながら
先着場所であるホテルに向かいました。

時間ぴったりに
お客様は女性を同伴して現れました。

やはり・・・

夫人をどのようにエスコートするか

ホテルの場合は、車寄せが混雑していなければ
ドアサービスをベルボーイがやってくれるので
お客様が一人であれば、乗務員はそのまま運転席側でお迎えし
お客様の乗車と同時に運転席に体をすべり込ませ、
すぐに発進させることが可能となります。

これが二人以上となると
当然右側から乗車される人に対して
乗務員がドアサービスをするようになります。

ところで、女性を同伴してこられた場合
我々乗務員はどのようにエスコートすべきでしょうか。

その場であれこれ考えている間に
お客様は車に乗り込んでしまうので
こういうケースに備えて、
あらかじめシュミレーショをしておかないと
ぎこちないおもてなしとなってしまいます。

車内の上座、下座

ここで皆さんに考えていただきたいのは
女性同伴に限らず、車に乗り込む際
車の中の座席で、「上座」はどこになるのかということ

また、それに準じて座る位置をどうすればよいか
この際ですから、ついでに整理しておきましょう。

宴会の席や会社の応接室、会議室などなら
一般常識的に比較的悩まずともわかるもので
普通宴会の席などでは入口から一番遠い席、
奥の席へ行くほどに上座としていますし、
床の間があればその前というのが定番。

しかし、これは部屋での話であって
車の中はどうなるのか・・・です。

ビジネスマナーハンドブックの模範解答

偉そうに質問致しましたが
私も車の中の席順に関しては自信がなく
「ビジネスマナーハンドブック」なるものを取り寄せて
確認してみました。

handbook.jpg


この本の中に「自動車の乗り方」
という項目があるんですね

専門の運転者がついている乗用車では
以下の通りとなっていました。

sekijjun.jpg


いかがでしょうか?

ちょっと疑問がある人もおられるでしょうね?

私もこれを見たときに、現実的じゃないな・・・
そう感じました。

席順の根拠

どうして車の中の席順がそうなるのか
次のように根拠が説明されていました

車の席順
運転者の真後ろが最上席となる理由

@事故の場合に危険度が低い
A外の景色が良く見える
B部屋の座席でも上位者優先だから

以上が一般論

さらに各国のエチケット、マナーを調べている外務省儀典官の話が紹介されていて、

運転席とは関係なく、右側の席が最上位となっている

国際間の儀礼(プロトコール)について解説された本にも、
はっきりと書かれている

というのです。

結局、特別な根拠はなく、慣例的なもの
というのがその理由なんだとか。

我々からすれば、この考え方で 原則を押し通そうとすると
無理が生じるケースがあることを知っています。

上位者であっても、先に降りなければならない場合だとか
車内で話をしなければならないケース
天候が不順で、来られた順に次々乗車していただく場合など
ケースバイケース

したがって
車内にエスコートする者は乗車される方々の個々の事情をよく把握した上で
座る場所をご案内すべきだということになります。

そうなると
我々専門の運転者 すなわち乗務員は乗車される方々の人間関係や
その時の細かな諸事情を正確に把握しているわけではないので

結局、にっこりとドアサービスに専念する

ということになります。

夫人へのおもてなし

さて話をもとに戻します

先ほどのお二人。
車に乗り込む際に、
この社長さんは夫人をエスコーとして、
いつも自分一人の時に乗車する方(後部座席左側)へ案内しました。
そして自分は車の後ろを回り込んで私のドアサービスを受けました。

この動作が実に流れるように自然にやってのけたのです。

私は内心で

へえ〜

と感心しながら、運転席に戻りハンドルを握ると、
普段よりも慎重にアクセルを踏み込んでゆっくりと車を動かしました。

過去に何度か夫人を同伴するお客様をお乗せした経験がありましたが、
みな一同男性は後部座席左側 女性は右側に座られましたし、
今回のように 実に優しく、夫人に対される方を目にしたのは初めてだったのです。

名の知れた企業のトップの方です。
やはりリーダーはこうでなければ・・・

人格を感じる一瞬のできごとでした。:

レディーファースト

ホテルで先着時間まで待機している間に
ネットでこの社長の名前で検索をかけてみたら
会社のホームページで簡単な経歴が紹介されていたんですが、
それを見ると、アメリカにある支社で10年ほど勤務されていたことがわかりました。

ほう・・

この方が
レディーファーストの文化に影響を受けて
とった行動であるかは定かではありません。

でも、見ていて実に美しい
そのお客様の人格の香りが心地良かったのです。

これこそ
真のレディーファーストなのだろう・・・

なぜか勝手にそう思い込んでいる自分がそこにいて

ふと、フロントガラスに
わが妻の顔がぼんやりと浮かび上がりました・・・

はて、
私も家内と車に乗り込むとき
美しく、そして
いたわるようにエスコートしてあげられるだろうか・・・

sakura and cuple.JPG


いやいや
機会さえあれば俺だって・・

その機会をいつ作るのか
それが問題なんですけどね・・・



目次一覧へ
 カテゴリ
 タグ